こんにちは。ゆっきぃです🙂
ピースボートで訪れたケイマン諸島は、カリブ海の楽園。
青い空と透き通った海が特徴の素晴らしいリゾート地でした。
一見のどかな田舎町と思いきや・・・
人口6万人のこの小さな島には、60,000社の法人があります。
さらには600の銀行と、1万のファンドも存在しています。
なかでも面白いのがウグランド・ハウスという5階建てのビル。
このビル1つで実に18,000社もの会社が登記されています。
お金の香りがぷんぷんしてきました(笑)
さて、この島にはどんなからくりが潜んでいるのでしょうか。
目次
南の島とタックスヘイブン
オフショアセンターとは
ケイマン諸島について、注目したいのが、オフショアセンターとしての性格です。
オフショアセンターとは、金融規制を緩和し、多数の投資目的の機関を誘致することを目的とした地域のことです。
貧しい国が採用するケースも多く、その国の経済規模とかけ離れた金融市場を有する事ができます。
産業に乏しい国では、法人税を著しく低率もしくは免除することで、大企業や裕福な人の進出を促し、自国でお金を使ってもらったり、手数料収入を得ることを目的としています。
一方で先進国でも自国に企業を誘致して国際競争力を高めるために、都会の中心に経済特区を設けるケースが増えています。
ケイマン諸島の税金事情
ケイマン諸島では、売上、利益、所得、資産、株の値上がり、遺産相続、全てに対して税金がかかりません。
主要な財源は、会社設立時の登録料や管理料、輸入品の税金です。
タックスヘイブンとは
オフショアセンターでは、税制面で優遇措置を行うことが効果的なため、数々の優遇税制を引いてグローバル企業や富裕層の抱え込みを行っています。
これらの政策によって税金が特に安い地域を租税回避地(タックスヘイブン)と呼びます。
タックスヘイブン自体は合法的な存在ですが、不正に利用されることが多く、近年世界中で問題視されています。
ここで問題になる不正行為は、一般的な節税の域を超えた明らかな脱税につながる取引と、犯罪で使われたお金の資金洗浄(マネーロンダリング)です。
タックスヘイブンの条件
- 税金が安い
- 法規制が緩い
- 秘密厳守
- 活動しなくて良い
①税金が安い
税金は無税か極めて低率なのが、タックスヘイブンのそもそもの条件です。
②法規制が緩い
法人が簡単に設立でき、法制度の自由度が高いことが条件です。
悪い見方をすれば、法規制にいくらでも穴があるという意味にもなります。
ニューヨークやロンドンシティなどのオフショアと呼ばれる経済特区では、一国の中にありながら、その区域内では緩和された特別の金融制度が適用されています。
③秘密厳守
法人の所有者が名義上の人物であり、実質的な支配者が隠蔽されています。
④活動しなくて良い
タックスヘイブン地域内で活動せずに、外国で主な活動を行っても問題ありません。実態のない会社はペーパーカンパニーと呼ばれます。
節税と脱税の境界線
タックスヘイブンの使用は合法と違法のグレーゾーンすれすれの扱いです。
一応は合法とみなされるもの
- 特別目的会社(証券化SPC)
- ネットワークの優れた場所に地域の統括拠点を設置する場合
(シンガポールにアジアのヘッドクォーターを設置するなど) - 便宜置籍船(パナマ船籍などの船)を管理する目的で、海運会社が現地に子会社をつくる場合
租税回避とみなされる可能性があるもの
- グローバル企業において、登記上の本社と活動の場所が異なり、利益の大半が課税を免れている場合
明確に違法とされるもの
- 脱税のために利用すること
- マネーロンダリング(資金洗浄)目的での利用
(麻薬、詐欺、汚職などの犯罪に悪用)
世界を牛耳る3大ネットワーク
世界のタックスヘイブンのネットワークは大きく3つのグループに分けられます。
イギリス系グループ
イギリスグループは、ロンドンシティを中心としたネットワーク。
- イギリス本国の王室直轄領(マン島とチャンネル諸島)
- かつて植民地と呼ばれていた海外領土(ケイマン諸島や英ヴァージン諸島など海外の14の領土)
- イギリスと関係の深い国(香港、シンガポール、ドバイ、アイルランド、バハマなど)
アメリカ系グループ
アメリカグループは、ニューヨークを中心としたネットワークです。
- ニューヨーク
- それを囲むデラウエア、ネバダ、フロリダ、ワイオミングなどの州
- 海外領土(米ヴァージン諸島、マーシャル諸島、パナマ、リベリアなど)
ヨーロッパ系グループ
3つめはヨーロッパのグループ。
スイス、オランダ、ルクセンブルグ、ベルギー、オーストリアなどのEU圏内の国にも多くのタックスヘイブンが存在します。
イギリスやアメリカのような縦のつながりというよりも、ヨーロッパの小国同士が生き残りをかけた横のつながりです。
なお、EUは租税ブラックリストを作成し、国際的な脱税防止の牽制を強化しました。
今後は各国の関係性に変化が見られると思います。
節税効果の例
以下で設例に従って丁寧に解説します。
あなたも会社の経営者になったと思って考えてみてください。
なお、専門用語や計算はわかりやすくするため簡略化しています。
設例
あなたの会社は当期の利益(税引前)が100億円でした。
日本の法人税率を30%とすると、日本政府は30億円の税収になります。
会社の純利益(差引の手取額)は税金を引いた70億円ですね。
会社 | 日本政府 | |
利益(税前) | 100 | - |
法人税 | ▲30 | 30 |
純利益(差引額) | 70 | 30 |
(表の▲はマイナスを意味します)
最初あった100億が、会社70億、日本国30億に分配されました。
あなたは税金をもっと小さくし、利益をもっと多くだそうと考えています。
さて、どうしたら良いでしょうか?
対策例
タックスヘイブンでは、よく投資会社やコンサルティング会社を設立して税金を回避します。
ケイマン諸島では法人税率0%です。
子会社への利益の移転
親会社は、子会社に指導料(コンサル報酬)として100億円を支払います。
これは親会社の利益全体に相当する額です。
従って日本の親会社は利益0円なりました。
逆にケイマンの子会社に利益100億円が計上されます。
親会社(日本) | 子会社(ケイマン) | |
利益(節税前) | 100 | 0 |
利益(節税後) | 0 | 100 |
さて、親会社は利益100億円から0円になってしまいます。
利益なしですが、それでいいのでしょうか。
この場合、全く問題ありません。
親会社から子会社に100億円付け替えただけです。
グループ全体での儲けは変わりません。
親会社 | 子会社 | グループ全体 | |
利益(節税前) | 100 | 0 | 100 |
利益(節税後) | 0 | 100 | 100 |
更に子会社はペーパーカンパニーで、実権は親会社が握っているので、意のままに操ることが出来ますよ!
節税効果
次に税金を見ていきましょう。
日本の税金は30%ですが利益0円の30%なので法人税0円。
ケイマンの税率は0%なので100億円の0%で法人税0円です。
節税前
親会社 | 日本政府 | 子会社 | ケイマン政府 | |
利益 | 100 | ー | ー | ー |
法人税 | ▲30 | 30 | ー | ー |
純利益 | 70 | 30 | ー | ー |
節税後
親会社 | 日本政府 | 子会社 | ケイマン政府 | |
利益 | 0 | ー | 100 | ー |
法人税 | 0 | 0 | 0 | 0 |
純利益 | 0 | 0 | 100 | 0 |
全体の儲けは同じ100億円なのに、税金が30億円から0円になりました。
よって純利益(差引手取)は70億円から100億円になります。
親会社 | 子会社 | グループ全体 | |
純利益(節税前) | 70 | 0 | 70 |
純利益(節税後) | 0 | 100 | 100 |
タックスヘイブン国のメリット
さて、では、ケイマン政府は企業を誘致できたものの税金が得られず、どんなメリットがあるんでしょうか。
タックスヘイブン国は税金を得られない代わりに、会社設立の登記料や、毎年かかる管理手数料を取っています。
ケイマン諸島の場合は、初年度の登記と管理費で20万円ほど、以降は毎年10万円弱かかるようです(最低資本金5万ドルの場合)
つまり、ケイマン政府は書類にサインするだけで、初年度20万円、次年度以降も継続的に10万円の収入を得ることができます。
※6万社あるので単純に考えても設立で120億、管理費で毎年60億は得ることが出来ますね。資本金の大きい会社は管理費用も高いので実際はもっと膨大な額になりそうです。
さて、会社もタックスヘイブン国も両者得をして万々歳!
この制度のどこが問題なのでしょうか。
損をしたのは誰?
ここで損してしまった者が存在します。
実際の経済活動があり、社会サービスを提供したのに、それに見合う対価=税金を得ることが出来なかった日本国です。
グループ全体 | 日本国 | ケイマン諸島 | |
純利益(節税前) | 70億 | 30億 | ー |
純利益(節税後) | 100億 ▲20万 | 0 | 20万 |
損得 | +30億 ▲20万 | ▲30億 | +20万 |
本来であれば得られた30億は、国の運営、社会インフラの整備、福祉などに当てられるはずでした。
それが、得られなかった分は、社会政策や年金、医療、地方への交付の削減という形で反映されます。
となると最終的な被害者は、日本国民になります。
最後の仕上げ
グループの利益は株価を押し上げ、投資家に還元されます。
また、それに伴って経営者であるあなたの業績連動報酬も増加します。
しかしこれでは、日本で高額の所得税(最高40%)が取られてしまいます。
役員報酬を受け取るすると日本で所得税が課されてしまいます。
あなたは子会社に働きかけ、会社設立の際の功労金という名目で、ケイマン諸島の会社から子会社の役員として秘密裏に報酬を受けることにしました。
念の為、報酬は現金にせず、子会社を通じて海外に不動産や、金融資産といった形で購入することにしました。
失ったものと得たもの
日本国の税収が減ったことで、国が貧しくなりあなたが将来受けるはずの年金や社会福祉などのサービスは減少してしまいました。
しかし・・・
あなたはそれ以上の額をケイマンに多額の個人資産として残すことに成功したのです。
そして、これが富裕層と一般庶民を隔てる越えられない壁の存在です。。。
グローバル世界の実情
少し長くなりましたが、お付き合いありがとうございます。
良くも悪くも、あなたは多額の資産を形成することに成功しました。
そんなバカなと思われるかもしれませんが、前述のような事例は実際に行われていることです。
例題のようにコンサル料を100%払ってしまうのは流石に、あからさまなのでやりすぎですが、実際は様々なスキーム(巧妙な手口)を用います。
企業としては税金を払わなくてすめばその分利益になり得をするので、その甘い蜜に必死になって群がります。
一方で、国家としては本来得られる税収が他国に流れてしまい、国家サービスを続けられなくなるという、資本主義を揺るがしかねない問題をはらんでいます。
また、最後の仕上げのように強引なことをすると、日産のカルロス・ゴーン氏のようにもなりかねません。
架空取引や資産の横領で捕まった経営者は枚挙にいとまがありません。
持てるものと持たざるもの
しかしながらここで覚えておいていただきたいことがあります。
資本や金融取引によって生み出される財が労働で得られる財を凌駕するという事実です。
世界的大ヒットとなったトマ・ピケティの著書「21世紀の資本」にある通り、
財産の成長率は労働賃金の成長率を常に上回ります。
持てるものはより豊かに、持たざるものはより貧しくなるのは必然です。
そして豊かな人ほどより賢く資産を増やす事を考え、貧しい人よりも更に税金についてシビアに考えます。
これからのAI技術の発展はその傾向に拍車をかけ、富裕層に対してはより効率的にその資産を増大させ、体が資本の貧しいものにとっては、労働の価値を奪い取るという形で牙をむくでしょう。
持てるものがさらに豊かになる制度、その一端を担っているのが今回取り上げてきたタックスヘイブンなのです。
まとめと次回予告
- ケイマン諸島の海キレイ
- 世界中にタックスヘイブンは存在する
- 知らない所で大きな金が動いているらしい
- 富裕層は賢く投資し、賢く節税している
- 多国籍企業には世界規模の巧妙なスキームがあった
- 貧富の格差はさらに広がるばかり
次回2回目の特集は、GAFA(Google、apple、Facebook、Amazon)や、Microsoft、スターバックスなど世界を代表する多国籍企業のグレーな節税手法を解説します。
世界中でどれだけのお金が、タックスヘイブンに流れ込んでいるのでしょうか。そして、犯罪との関わりは?
広がる格差を止める術はあるのでしょうか。世界の取り組みにも迫ります。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう👋